台風11号「ハイシェン」発生も、日本への直接影響は限定的
2026年7月13日午前9時、フィリピンの東の海上で熱帯低気圧が台風11号に発達し、「ハイシェン」と命名されました。ウェザーニュースや気象庁の発表によると、同日正午時点の台風11号は、フィリピンの東、北緯10度50分、東経136度25分の位置にあり、中心気圧1004ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は18メートル、最大瞬間風速は25メートルで、西へゆっくりと進んでいます。半径440キロ以内では風速15メートル以上の強い風が吹いています。
しかし、今後の進路予想では、台風11号はさほど発達することなく、週後半には勢力を弱めて熱帯低気圧に変わる見込みです。また、日本の南に張り出す太平洋高気圧に進路を阻まれるため、そのまま日本列島へ北上することはないと予測されており、日本への直接的な影響は限定的とみられています。
台風11号の国際名は「Haishen(ハイシェン)」で、中国が提案した「海の神」を意味します。
異例の早さで始まった2026年の台風シーズン
今年の台風シーズンは、統計史上でも特異な様相を呈しています。気象庁などの観測によると、2026年は1月から7月まで毎月台風が発生しており、これは1951年からの統計で1965年、2015年に次ぐ3回目の非常に珍しい記録です。
特に6月には、台風6号「チャンホン」が6月3日に和歌山県に上陸し、統計史上4番目に早い上陸となりました。 この台風は日本列島に大雨をもたらし、徳島県や和歌山県で線状降水帯が発生、広い範囲で氾濫危険情報が発出されました。 その後も6月下旬には台風7号「メーカラー」と台風8号「ヒーゴス」が相次いで日本列島に接近し、西日本を中心に豪雨や土砂災害、浸水などの被害が報告されています。
これらの状況から、今年の台風シーズンは例年よりも活発で、日本列島への接近・上陸リスクが高い傾向にあることが示唆されています。今回の台風11号は直接的な脅威とはならないものの、本格的な台風シーズンへの序章と捉えるべきでしょう。
エルニーニョ現象の進行と秋の台風リスク
日本気象協会など複数の気象機関の見通しでは、2026年の台風発生数は6月から7月にかけて平年並みか多く、8月以降は概ね平年並みと予想されています。 しかし、日本列島への接近数に注目すると、8月を中心に平年並みか多くなる見込みです。
今年の大きな気象要因として、ラニーニャ現象終息後、春から夏にかけてエルニーニョ現象へ移行する可能性が高いことが挙げられます。 エルニーニョ現象が発生すると、太平洋高気圧の日本付近への張り出しが弱まる時期があり、このため8月頃は台風が日本列島へ北上しやすくなると考えられています。
さらに警戒すべきは9月以降の秋の台風シーズンです。エルニーニョ現象が進行すると、北太平洋西部の台風の発生位置が平年よりも南東側に偏りやすくなる傾向があります。 この場合、台風が発生してから日本付近に到達するまでの海上の距離が長くなるため、暖かい海面から十分な水蒸気を供給され、発達した状態で接近する可能性が高まります。 接近数自体は平年並みでも、一つ一つの台風が非常に強い勢力となり、甚大な被害をもたらす恐れがあるため、例年以上の警戒が必要です。
気候変動がもたらす台風の「質的変化」
近年、台風や豪雨の激甚化は地球温暖化との関連が指摘されています。日本近海の海水温上昇や大気中の水蒸気量増加が、台風の勢力強化や降水量の増加に影響していると考えられています。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書や気象庁の研究では、世界全体で熱帯低気圧の総数は減少または変化しないと予測される一方、個々の熱帯低気圧に伴う降水量や、「強い」強度の熱帯低気圧の割合は増加する可能性が高いとされています。 日本付近においても、台風の強度が強まり、それに伴う降水量が増加すると予測されています。
例えば、工業化以前に比べて世界の平均地表気温が4℃上昇した気候下では、台風に伴う日本の陸上における降水量が増加することが示されており、過去の甚大な被害をもたらした台風も、温暖化が進行した状況下で再現すると降水量が増加することが明らかになっています。 これは、台風がもたらす災害が全体として激化する可能性を示唆しており、単に台風の数を追うだけでなく、「質的な変化」への対応が急務となっています。
複合災害への備えと情報の多角的活用
今年の台風シーズンは、その異例の始まりと、エルニーニョ現象がもたらす後半の強大化リスク、そして気候変動による根本的な激甚化傾向が重なり、これまで以上の警戒が求められます。特に、一つの台風による影響が長期化したり、広範囲に及んだりする「複合災害」への備えが重要です。
企業においては、物流、製造、店舗運営、屋外作業、イベント運営など、幅広い業務判断に台風が影響します。接近数だけでなく、台風の発達程度、進路、影響範囲や影響期間にも注意しながら、早めの備えを進めることが重要です。
個人レベルでも、水・食料・ポータブル電源の備蓄、ハザードマップの確認、避難経路の把握といった基本的な対策を改めて見直す必要があります。 また、酷暑の中で停電が発生した場合の熱中症対策として、飲料水や冷却グッズ、非常用電源の準備も不可欠です。
気象情報は常に最新のものを確認し、気象庁や日本気象協会、ウェザーニュースなどの信頼できる情報源から、予報円の大きさや進路予報だけでなく、最大風速や降水量予測、線状降水帯の発生可能性といった詳細な情報まで多角的に収集・活用することが、災害から命と財産を守るための鍵となります。今回の台風11号は「平穏な通過」が予想されますが、この時期に発生した事実が、本格化する台風シーズンへの警鐘であることを深く認識し、来るべき状況に万全の備えを進めることが、私たち一人ひとりに求められています。