三菱パジェロ、7年ぶりの「砂漠の王者」帰還へ

自動車業界に衝撃と歓喜が走っている。かつて「砂漠の王者」として世界を席巻し、日本国内のRV(レクリエーショナル・ビークル)ブームを牽引した三菱自動車の象徴的モデル「パジェロ」が、2026年秋に新型として世界初公開されることが発表された。2019年に日本国内での生産を終え、2021年には海外向けモデルも生産終了となり、約39年の歴史に一度幕を下ろしていたパジェロ。その7年ぶりの復活は、国内外のファンから熱狂的な歓迎をもって迎えられている。

今回の復活は単なるノスタルジーの喚起に留まらない。三菱自動車が掲げる新たな中期経営計画の中核を担う「尖った商品・ブランドの強化」を象徴するフラッグシップモデルとして、その戦略的な意義は極めて大きい。現代のSUV市場で再び存在感を放つべく、全面刷新された新型パジェロは、その伝統を継承しつつも、時代に即した革新を多数盛り込んでいることが明らかになっている。

「なぜ今?」復活を決定づけた市場の声と三菱の決断

パジェロの生産終了後も、国内外の市場からは根強い復活を望む声が多数寄せられていた。特に中古車市場では、その悪路走破性や信頼性への評価は高く、特定地域では需要が衰えることがなかった。三菱自動車の加藤隆雄CEOは「販売を終了してからも各国でお客様から復活を望まれる声が非常に強い。社内で協議を重ねて、今回パジェロとして復活させたほうがいいだろうという判断を行った」と語っている。

この背景には、近年の本格SUV市場の再燃がある。トヨタのランドクルーザーシリーズが示すように、堅牢な車体構造と高い悪路走破性を持つクロスカントリーSUVへの関心は高まっている。三菱自動車は、軽自動車の「デリカミニ」やピックアップトラックの「トライトン」など、SUVに強いブランドイメージを活かした車種を相次いで投入し、好評を得ていた。こうした成功体験と市場の動向が、パジェロという三菱のDNAそのものであるモデルの復活を後押ししたとみられる。

新生パジェロの骨格:トライトン譲りのラダーフレームと電動化の可能性

新型パジェロの最大の注目点は、その構造にある。歴代パジェロは、特に3代目以降、乗用車的な快適性と悪路走破性を両立させるため、モノコックボディにラダーフレームを組み込んだ「ビルトインフレームモノコックボディ」を採用してきた。しかし、新型ではピックアップトラック「トライトン」のラダーフレームをベースに改良を施し、キャビンや前後サスペンションを専用開発することで、卓越した悪路走破性と上質かつ快適な乗り心地を両立させるという。

パワートレインの主力は、最高出力204psを発生する2.4リットル直列4気筒ターボディーゼルが有力視されている。 加えて、最も注目されるのはプラグインハイブリッド車(PHEV)モデルの導入だ。これは「アウトランダーPHEV」で培った技術を基盤とし、2.4リットルMIVECエンジンとデュアルモーターを組み合わせることで、システム最高出力300~320ps、最大トルク700Nm前後、EV走行距離約100kmを目指すと予測されている。 本格クロスカントリーSUVに先進的なPHEV技術を搭載することは、ライバル車との差別化を図る上で極めて重要な要素となるだろう。

「パジェロ・ファミリー」戦略:ブランド再構築の多角的な展開

新型パジェロの登場は、単一車種の復活に留まらない。三菱自動車は、パジェロのネーミングを冠した「シリーズ展開」を計画していることを明らかにしている。これは、かつて「パジェロミニ」や「パジェロジュニア」、「パジェロイオ」といった派生モデルが存在したように、多様なニーズに応える「パジェロ・ファミリー」を構築する戦略だ。

具体的には、2027年後半にはアセアン地域で人気のコンパクトSUV「エクスフォース」をベースとしたコンパクトクラスの「パジェロ」が登場する可能性も報じられている。 これらの派生モデルは、本格的なオフロード性能だけでなく、都市部での取り回しやすさや、先進的なハイブリッド技術の搭載により、より幅広い顧客層へのアプローチを目指すものとみられる。三菱のSUVラインナップを多角的に強化し、ブランド価値を再構築する上での重要な一手となるだろう。

なお、海外市場で継続して販売されている「パジェロスポーツ」(日本ではかつてチャレンジャーとして販売)も、トライトンをベースとするラダーフレームSUVであり、新型パジェロとの関係性には注目が集まっている。

市場の覇権を狙う:ランドクルーザー250との競合

新型パジェロの登場は、特に国内市場において、トヨタの「ランドクルーザー250」との直接的な競合を意識したものとなる。予想価格帯は550万円から700万円台後半とされ、この価格帯はまさにランドクルーザー250と重なる。 ランドクルーザー250にはPHEVの設定がないため、新型パジェロの電動パワートレインは大きな強みとなるだろう。

三菱自動車は、ダカールラリーで通算12回の総合優勝という輝かしい実績を持つパジェロのブランド力を最大限に活用し、その悪路走破性、操縦安定性、信頼耐久性を改めて訴求することで、市場での独自のポジションを確立しようとしている。 「ラリーアート」仕様の追加も将来的に期待されており、モータースポーツイメージを活かした高性能モデルの展開も視野に入れているとみられる。

ダカールを制したDNA:脈々と受け継がれる冒険心

パジェロは1982年の初代登場以来、世界170以上の国と地域で累計325万台以上を販売し、三菱自動車を象徴する存在であり続けてきた。 特に、世界一過酷なモータースポーツと言われるダカールラリーには1983年から参戦し、1985年には市販車無改造クラスでのデビューウィン、初の総合優勝を達成。 その後も7連覇を含む通算12勝を挙げ、「パリダカを制するパジェロ」というイメージを世界中に浸透させた。この圧倒的な実績が、パジェロの比類なき悪路走破性、信頼性、耐久性を実証し、多くのユーザーから高い評価を得る礎となった。

国内では1990年代のRVブームを牽引し、アウトドアレジャー文化の普及に大きく貢献した。その冒険心と挑戦のDNAは、新型パジェロにも脈々と受け継がれることとなる。

三菱自動車、新時代に向けたブランドの象徴

今回のパジェロ復活は、三菱自動車が2030年代に向けた新中長期ビジョン「Challenge 2025」の中で掲げる「尖った商品・ブランドの強化」という方針の大きな柱の一つである。同社は今後4年間で1兆円を投資し、13車種を投入する計画であり、その中でもパジェロは成長加速の鍵を握るフラッグシップとして位置づけられている。

電動化技術の進化、デジタル化への対応、そしてグローバル市場での競争激化が進む中で、パジェロという強力なブランドを再び前面に押し出すことは、三菱自動車が自社のアイデンティティを再確認し、持続的な成長を実現するための重要な戦略である。新型パジェロは、単なる一台のSUVではなく、三菱自動車の未来を牽引する象徴として、その動向が注目される。

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